伊豆・河津町「わさヴィレッジ」で特産わさびの収穫体験

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わさヴィレッジ

伊豆を代表する特産品であるわさび。天城山系の清らかな水で育つわさびは、伊豆のみならず静岡県が全国に誇る自慢の食材でもあります。

実はわさびの歴史というのは非常に古く、飛鳥時代にまで遡ります。その当時は自生したものが薬草として使われていたのだそう。栽培が始まったのは江戸時代初期で、静岡・安倍川の上流、現在の静岡市葵区有東木(うとうぎ)地区が発祥とされています。

1607年、駿府城で晩年を過ごしていた徳川家康公に有東木のわさびが献上されると、あまりの気に入りように、有東木から門外不出のご法度品にしたという逸話も残されているほどです。

そしてその後わさびは、伊豆など各地に広まっていきました。

本物の農家が受け入れてくれる「わさヴィレッジ」って?

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受付場所となる河津桜観光交流館

今回はそんな伊豆の名産わさびの収穫を体験しに、河津町の「わさヴィレッジ」にお邪魔してきました! 「わさヴィレッジ」とは特定のひとつのスポットを指すのではなく、わさびの収穫体験ができる河津町のわさび農家さんの総称。「観光客の方に、わさびの魅力を農家が直接伝えたい!」と10軒の協力農家が集い、2021年から始まりました。

受付窓口になっているのは、河津桜観光交流館です。参加には7日前までの事前予約が必要ですが、2〜6月の期間中は雨の日を除き、毎日開催されています。※体験する農家の指定はできません。

体験当日、まず河津桜観光交流館で受付を済ませます。パンフレットにレンタルの鎌やハサミなどを受け取ったら、担当スタッフの方から収穫体験の流れやわさびの歴史、河津町・大鍋地区のわさび栽培、わさびの保存方法について教えてもらいます。

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パンフレットを片手に説明を受ける
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受付時に受け取るわさヴィレッジのトートバック(おみやげ)、レンタルの鎌とハサミ、長靴。長靴のレンタルは予約時にお願いします

体験場所になるわさび沢までのアクセスをマップで確認したら、マイカーで移動です。各わさび沢までは、だいたい車で15〜20分の距離。長靴をレンタルしないのであれば帰りは現地解散になるので、忘れ物がないように気をつけて。トイレもわさび沢にはないので、出発前に済ませておきましょう。

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目印を確認してマイカーで移動

今回お世話になる、平川ご夫妻のわさび沢に到着!

到着しました! 現地に着いたら長靴に履き替えスタンバイ。

今回は河津町大鍋地区でわさび栽培をしている、平川直寛さん・輝恵さんご夫妻のわさび沢で体験させていただきます。

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わさび農家の平川さんご夫妻

6年前、ホテルマンからわさび農家に転身したという直寛さん。元々はおじいさまがわさび苗の育成を行っていたのだそう。お父さまとも親子3代でわさび栽培に携わり、現在ご夫妻で11カ所のわさび沢でわさびを育てています。

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わさびの一生を教えてもらおう

体験前に、わさびがどのように育っていくのかを教えていただきました。

わさびは5〜6月に結実した種を採種し、冷蔵庫で一定の温度をキープし保存。9〜10月に種まきをしてわさびの芽が出たら苗床に植え替え、ハウスで約2カ月かけて苗づくりを行い、その後わさび沢に植え付けて育てます。わさびを種から育てているとは驚きました。

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ハウスで育成中の苗

では、わさび沢へ移動しましょう。体験先の農家さんによっても異なりますが、わさび沢までは徒歩で2〜5分程度です。

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わさび沢までは徒歩で移動

農業遺産にも認定される、伝統の畳石式わさび栽培

静岡市発祥のわさび栽培が、伊豆に伝わったのが1744年。ここ河津町大鍋地区では、1800年代のはじめ頃、大鍋地区出身の平川平助が前述の安倍地方(現静岡市)から持ち帰ったわさび苗で栽培を始めました。

当時から河津町は天城の名水に恵まれ、わさびの栽培条件が整っていたのだそう。稲作が盛んなエリアでしたが、今から数十年前に多くの農家がわさび栽培に切り替え、現在河津町内で約50軒、ここ大鍋地区だけでも10数軒のわさび農家がわさびを育てています。

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畳石式の構造で作られたわさび沢

わさび沢は山間にあり、見上げると棚田状の階段構造になっています。

階段構造が特徴の畳石式は、現在の伊豆市で開発された築田法。大鍋地区のわさび沢はすべて畳石式で造られています。一番下に大きな石の層、その上に中位の石の層、その上に小さな石の層、一番上に川砂の層があり、濾過装置のようになっているのです。

この畳石式でわさび沢を造ることで、酸素を多く含んだ水を供給することができ、高品質なわさびを育てることができるというわけ。畳石式での栽培方法は“静岡水わさびの伝統栽培”として、2017年3月に日本農業遺産(※1)、2018年3月に世界農業遺産(※2)にも認定されています。

※1 わが国において重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域・システムを農林水産大臣が認定する制度
※2 世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域やシステムを国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する制度

1本1本丁寧に手作業でわさび沢に植え付けた苗は、収穫までの約1年間、手間と時間をかけて丁寧に育てられます。

いざ、わさびを収穫!

それではいよいよお待ちかねの収穫体験です! この体験では1人1本のわさびを収穫し、持ち帰ることができます。

大きな葉をつけ、水面から太く育った根茎が見えるわさびが狙い目。

わさびの周りの小石や砂を鎌で掻き出すように掘り、根茎に近い茎の部分を持ちながら、少しずつ左右に動かして引き抜いていきます。

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根張りが良くて意外と抜けない

無理やり引っこ抜くと大事なわさび(根茎)が途中で折れてしまったり、茎が折れてしまうのでここは慎重にいきましょう。

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葉の部分から根まで意外と大きいわさび

地中に埋まっていた部分をよく見ると、普段擦り下ろして使う部分の“根茎”があり、その先には根、根茎の周りには小さな芽がついているので、これらを1つずつきれいに処理していきます。

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根茎の回りに根がしっかり
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根など余分な部分をはさみで切り落とす

水洗いをして根茎近くにある芽は1本ずつ切り離し、根はハサミでカット。変色した茎や根などを取り除くと、どこから見ても立派なわさびが登場! ちなみに、小さな芽は土に植えれば育つそうです。

根から葉まで!わさびを丸ごと味わおう

伊豆のわさびは辛さと香り、擦り下ろした時の色の良さが抜群! これは伊豆産に限った話ではありませんが、捨てるところがないというのもすごい。三杯酢漬けなどにされる茎、天ぷらにおすすめの葉。根の部分は乾燥させ味噌とみりん、砂糖を加えればわさび味噌に。お馴染みのわさびの根茎は擦り下ろして刺し身と一緒に。日本料理に欠かせない食材ですね。

ステーキにわさびというスタイルも定着していますが、平川ご夫妻、直寛さんのおすすめは豚丼! わさびの辛さが肉の脂で中和されまろやかでさっぱりと食べられるそう。「牛肉よりも豚肉の方が相性がいいですよ」と直寛さん。一方、輝恵さんのおすすめは蕎麦。つゆに溶かさず、蕎麦にそのままのせて味わうのがベストだそうです。

ほかにも普段の味噌をわさび味噌に変えて豚汁を作ったり、ソフトクリームに擦り下ろしたわさびをあわせたり。パンフレットにおすすめレシピが掲載されているので、そちらもぜひ試してみてください。

茎や葉がやわらかい時期、わさびの花が咲く時期など、わさびの状態も季節ごと変化していくので、その時の状態に合わせ料理を変えるのが一番だそうです。体験時に、その時期にぴったりの食べ方を聞いてみるといいですね!

当日すぐにわさびを味わいたい方は、河津町内の飲食店へどうぞ。わさび丼やお蕎麦などで産地の味を味わってみてください。(詳細は収穫体験を予約する際等に、河津桜観光交流館にお問合せください。)。

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立派なわさびを収穫しました!

ここでの収穫体験は観光型のわさび沢ではなく、実際に農家さんが育てている場所で行われます。「大事なわさび沢のなかを歩きまわられたくない……」と一般観光客の受け入れを拒むところも多いなか、立派なわさびを育てている貴重なわさび沢で収穫体験をさせてもらえることに感謝ですね。

農家さんから直接話を聞いたり、スーパーとは違う、まさに採れたて新鮮なわさびを味わえる魅力たっぷりの体験でした。

<DATA>
■わさヴィレッジ わさび収穫体験
住所:賀茂郡河津町笹原72-12
受付:河津桜観光交流館1F案内所 10:00〜・11:00〜の2回
電話:0558-32-0290
料金:3,000円(小学生以上)2名〜・2組、5名まで/各回
雨天・荒天時中止