国内屈指のお茶の生産地として知られる静岡県。静岡県の中でも牧之原、川根、掛川、菊川など中部から西部エリアの生産地が有名ですが、お茶栽培は県内全域で行われています。
今回は、そんなたくさんある静岡県のお茶の産地の中から、伊豆エリアでお茶栽培65年(2021年現在)の歴史を誇る“蔵屋鳴沢”(伊豆の国市)を取材してきました。
それでは新茶の季節にぴったりな「おいしい」体験を紹介していきますね!
4〜6月は新茶の季節! 静岡で新芽摘みを
ところで、新茶の季節とはいつを指すのかご存じですか?「夏も近づく八十八夜〜♪」そんな歌の歌詞から、夏よりも前というのはわかりますが、八十八夜って?
八十八夜とは、立春(節分の翌日)を起点とし、そこから88日を数えた5月2日前後、つまり新茶の時期を表しているそうです。
本日訪れている“蔵屋鳴沢”では、毎年、その新茶シーズンの春と夏が過ぎてまた新芽が出る秋に自社茶畑で茶摘み体験を開催しています。いずれも新芽を摘みますが、新茶の時期を迎えるGWからの春がおすすめとのこと。それでは早速茶摘み体験に出かけましょう。
いざ、茶娘に変身!
まずは“反射炉物産館たんなん”で受付を済ませたら、茶娘に変身!
かすり着物の着方はスタッフが教えてくれるので、仲間同士で手伝い合いながら着替えてくださいね。「娘」とありますが、もちろん男性もOK。普段できない娘姿は意外とイケてるかも!?
お子様用の着物も用意されており、3歳から利用できます。
衣装を着るだけで、テンションは確実に上がるはず! 着替えが済んだら茶摘み用の籠を持って茶畑へ移動しましょう。
富士山を望める茶畑で茶摘み体験
坂道が少し急ですが、登り切るとそこには展望台が。お天気が良ければ眼下に広がる茶畑から続く山々の向こうに雄大な富士山を望むことができます。
また蔵屋鳴沢の近くには、世界文化遺産にも登録されている江戸時代末期の貴重な遺構、韮山反射炉があり、この展望台からは富士山と韮山反射炉のW世界遺産が眺められるんですよ(2021年10月までは韮山反射炉耐震工事のため、反射炉の外観を見ることはできません)。
せっかくですので、ここで韮山反射炉の説明も少し! 韮山反射炉は金属を溶かし大砲などを鋳造するための溶解炉で、幕府の命により1857年に造られました。1864年に幕府直営反射炉としての役割を終えるまでに、鉄製18ポンドカノン砲や青銅製野戦砲などの西洋式大砲を鋳造しています。国内で現存する、唯一の稼働した反射炉であり、2015年に「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録されました。
では、茶畑へ。
お茶の木って、そんなに高さがないイメージがありましたが、意外と高く胸のあたりまで葉が茂っていました。
茶摘みは新しく伸びた、柔らかな新芽部分を摘み取ります。
先端から10センチくらいのところをプチっ。新芽部分は柔らかなので、お子さんでも簡単に摘めそうです。意外にも摘んだ直後はお茶の香りはほとんどしません。製茶の工程で茶葉を蒸したり揉むことで豊かな香りが生まれるようです。
さてさてどんどん摘んでいきましょう。
収穫量に制限はないので、籠いっぱいに摘んでOKです。茶葉はおみやげに持って帰れるので、たくさん摘んで自宅に帰ってからのお楽しみの分をしっかり確保しましょう。自宅での楽しみ方は後ほど。
茶娘の衣装を着ての茶摘み体験はなかなかできないので貴重な思い出になるはず! スタッフが記念撮影のお手伝いもしてくれるので気軽に声をかけてくださいね。
摘んだ茶葉は紙袋に入れて持ち帰ることができます。活用レシピも貰えるので、天ぷらや烏龍茶づくりもぜひお試しを。摘みたて茶葉の天ぷらはほろ苦さもありおつまみにもぴったり。烏龍茶を手作りできることにも驚きました。頭に巻いたオリジナル手ぬぐい、煎茶もおみやげに付きますよ。
お腹も満足! お茶畑de「青空CHAZEN」
茶摘みと一緒に楽しみたいのが、茶畑に用意された畳の完全予約席で味わうお弁当タイム「青空CHAZEN」。茶摘みシーズン限定のお弁当(1500円)は、蔵屋鳴沢併設の「反射炉ビヤレストランほむら」で作られています。※2024年1月15日 をもちまして「レストランほむら」は閉店しました。
お弁当には炎を意味する「ほむら」自慢の炭火焼きメニューが盛りだくさん。
柔らかな肉質の自家製ローストビーフ、銘柄鶏“ふじのくにいきいき鶏”、サバ、鶏の肉団子、わさびウインナー、すべてじっくり炭火で調理されており、炭火特有の香ばしさが食欲をそそります。お茶の香りがふんわりと香る、煎茶とほうじ茶の炊き込みご飯のおにぎりも青空の下でじっくり味わいました。
「青空CHAZEN」は「チャレンジ茶摘み体験」と同時申し込みで、お茶の葉天ぷらと自社製茶のボトルが付くのでおすすめです。また、平日、休日ともに11時の回限定で、茶娘の姿のまま食事ができますよ。ぜひ特典付きの11時で予約したいですね。なお、畳席の利用は3名までとなっています。
茶畑には屋根がないので、暑さとUV対策を忘れずに!
ちなみにあいにく雨天の場合は、茶畑内に設営されたテントでの茶摘み体験ができるそうです。お弁当もレストランで食べることができますので、雨の日もご安心を。
煎茶だけじゃない!? お茶を使ったビールにソフトクリームも
摘みたての茶葉で作る煎茶はもちろんですが、ここに来たなら“反射炉ビヤ”も忘れてはいけません。「お茶摘みに来て、ビール!?」と驚かれるかもしれませんが、実は蔵屋鳴沢の前身は造り酒屋でもありました。江戸から明治時代にかけて、伊豆の良質な湧水を利用し日本酒の醸造を行っていたそう。戦後になってからお茶の栽培・販売をはじめ、茶畑でのお茶摘み体験は1975年に提供を始めたそうです。
そして、もと造り酒屋として、反射炉を訪れる多くの人においしいビールを味わってもらいたいと1997年に創設したのが“反射炉ビヤ”。伝統と革新を両立し、韮山の地域性にこだわったビールを手掛けています。
そこで生まれた蔵屋鳴沢ならではの、新茶を楽しめるビールがこちらの「とれたてGreen Tea Ale」。“韮山反射炉 茶の庵”ブランドで製造する、やぶきた種のミル芽(若くて柔らかい芽)の新茶を惜しみなく使用していて、お茶の華やかな香りと奥深い味わいが特長。ビールの仕込み工程で2回に分けて新茶を加えることで風味に層が生まれ、味わいのあるビールになるそうです。
お茶の風味が口に広がり、お茶由来の渋みや深みのあるうま味を感じるお茶ビールは、“反射炉ビヤレストランほむら”で味わえるほか、“反射炉物産館たんなん”でも購入できます。
そのほか「太郎左衛門」「頼朝」「早雲」など地元にゆかりのある先人の名がついた定番ビールや、地元フルーツを使った季節限定ビールなどさまざまなクラフトビールを販売しています。
そして最後に「新茶ソフトクリーム」も! 摘んで、食べて、飲んで、締めにはやっぱりスイーツが欠かせません。
自社農園で採れた自慢の新茶を贅沢に使い、お茶のおいしさをギュッと閉じ込めた新茶ソフト。新茶の時期には、ポスターに「新茶ソフトになりました」のPOPが加わるので、見つけたらぜひ!
世界遺産の反射炉や富士山を眺めながらの茶摘み体験、オープンエアの畳席で味わうお弁当。新茶ビールに新茶ソフト、新茶の試飲など静岡のお茶をたっぷり楽しめる“蔵屋鳴沢”で、フォトジェニックな体験を満喫してくださいね。
SNS投稿には「#おしゃぴく」「#おちゃぴく」をお忘れなく!
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■蔵屋鳴沢
住所: 伊豆の国市中272-1
TEL: 055-949-1208
チャレンジ茶摘み体験/4月中旬〜6月末日・9月中旬〜10月下旬頃
(平日11・13時、土日祝10・11・13・14時)
料金1800円(4・5月)1750円(6月)1700円(秋)
お茶畑de青空CHAZEN/4月中旬〜6月末?