東海道五十三次の世界!「岡部宿 大旅籠柏屋」で江戸時代にタイムスリップ

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「岡部宿大旅籠 柏屋」の外観

​品川宿から数えて、東海道21番目の宿場町にあたる岡部宿。小規模な宿場町でしたが、難所として知られる宇津ノ谷峠の西側に位置していたことから、難所の峠越えを支える宿場町として栄えてきました。

今回はそんな岡部宿を代表する旅籠である、大旅籠柏屋(おおはたごかしばや)をご紹介します。旅籠とは旅人が宿泊できる食事付きの宿屋のこと。1836年に建てられた大旅籠柏屋は、今なお江戸時代の面影を残す貴重な建物で、歴史資料館として一般公開されており、みせの間(見せの間、店の間。商いのための部屋のこと)や台所、1・2階の客室などを見学することができます。敷地内には土蔵を改装したギャラリーやカフェ、お土産や軽食を提供している物産館も併設。観光客だけでなく、地元の方も多く訪れる人気の施設です。

岡部宿 大旅籠柏屋の歴史

1833-34年制作, 東海道五十三次 保永堂版 読売新聞 額絵シリーズ(読売新聞社, 2011年)より
岡部宿大旅籠柏屋の横にある岡部宿本陣址

江戸時代の東海道五十三次の宿場には、本陣、脇本陣をはじめ、約3000軒の旅籠屋があったと言われています。岡部宿にも、当時は27軒ほどの旅籠があったそう。旅籠のなかでも間口5間以上のところが「大旅籠」と呼ばれるなか、間口が9間もあった柏屋は、当時としても大きな旅籠だったことがわかります。大旅籠柏屋を営んでいた山内家は、ほかに質屋も兼業していたようで、かなり裕福であったとの記録が残されています。(※1間=約1.82m)

しかし倒幕後は参勤交代制度がなくなり、さらに明治以降は鉄道の発達もあって、街道が廃れ、多くの旅籠屋は廃業に追い込まれるようになりました。山内家も時代の流れから、明治に入り旅籠屋は廃業し、質屋のみを営むことに。その後の明治中頃には、岡部町で最初の郵便局を開いています。

1994年、そんな歴史的建築物である大旅籠柏屋を旧岡部町が山内家から買い受け、修復工事を開始。1998年3月に工事が完了すると、同年11月に国の登録有形文化財に認定されました。そして、2000年11月より岡部宿 大旅籠柏屋として、一般公開されることに。2020年には、藤枝市、静岡市で共同申請した旧東海道の歴史や文化が日本遺産にも認定され、岡部宿 大旅籠柏屋はその構成文化財にも登録されています。

弥次さん喜多さんに迎えられ、大旅籠柏屋を見学

吊り大戸を開ける様子

それでは大旅籠柏屋を見学していきましょう! 入口の扉は吊り大戸と呼ばれる扉で、写真のように内側に大きく開きます。

弥次さん喜多さん、女将さんがお出迎え

建物に入ってすぐのみせの間では、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に登場する弥次さん喜多さんと女将さんがお出迎え。岡部宿の客引きから、大井川が川留め(増水して通れなくなること)で嶋田宿と藤枝宿が混んでいると聞き、岡部宿の相良屋(実在しません!)に泊まることになった弥次さん喜多さん。思わず、物語の世界に引き込まれてしまいます。

旅人はここで足をきれいにしてから、2階の部屋へと向かいます。現在みせの間に敷いてあるのは、目が細かい高級品の琉球畳ですが、江戸時代に使われていたのは、畳縁がなく、織り目も荒れている上、太いい草やチガヤが混ざった安価な畳だったそう。座るとチクチクと痛く、野郎畳と呼ばれていました。

記念撮影コーナー

大旅籠柏屋には、江戸時代にタイムスリップしたような気分になれる仕掛けがあちこちに施されています。主人の部屋である仏間では、旅籠の主人になった気分で記念撮影をパチリ!

香時計のお香に点火した様子

仏間には、ジグザグ模様にのせたお香に火を点け、お香の燃え尽き具合で時間を測る香時計というものがありました。すべて燃え尽きるまでに3時間かかるのだそう。かつては1/3の1時間ごとにお香を変え、香りの移り変わりで時間の経過がわかったそうです。なんて粋な時計なんでしょう!

現在でも、毎年6月10日の「時の記念日」には、香時計を実際に使用する様子を見ることができます。

狭く圧迫感の庶民の部屋と広く開放的な武士の部屋

2階でも弥次さん喜多さん、女将さんが登場。近づくと3人の会話が聞こえてくる
庶民の部屋の天井。大人が手を伸ばせば届きそう

大名や役人など身分の高い人が宿泊する本陣近くにあった大旅籠柏屋は、その家来の武士が宿泊する宿としても使われていました。建物の正面向かって右側(南側)は武士が宿泊するための部屋、土間を挟んで左側は庶民が宿泊する部屋という構成になっています。武士が宿泊する部屋にはヒノキがふんだんに使用されていますが、庶民用の部屋には安価なマツやスギが使われるなど、木材にも差がつけられていたそうです。

庶民が宿泊する部屋も、武士が宿泊する部屋も、それぞれの部屋の広さ自体は同じなのですが、庶民用の部屋は天井も低く、雨戸も閉まったまま。そのため圧迫感があり、なんだか狭く感じました。庶民が宿泊する部屋には男女の区別や定員もなく、大井川で川留めがあると10人以上が泊まることもあったようです。

明るく、眺めもいい武士の部屋
武士の部屋。庶民の部屋と比べ、天井が高くなっていることがわかる
庭から見た武士の部屋

武士が宿泊したエリアにはへりのある畳が敷かれた8畳の座敷が4部屋あり、奥の間、中の間、次の間(書院造)、本座敷と続いています。

身分が高い武士が泊まる本座敷には、欄間や床の間、違い棚もあり、濡れ縁から庭園や外の土蔵も見ることができるなど、一般的な旅籠とは異なる贅沢な造りになっていました。

岡部宿や江戸時代の旅文化が伝わる展示

東海道の様子がわかるジオラマ模型
行き交う人々で賑わう岡部宿
携帯用の硯

展示コーナーには、岡部の様子が描かれた浮世絵や、岡部宿の500分の1の縮小模型、江戸時代に使用されていた旅の道具などが並びます。紙で作られたそろばんや携帯用の硯など、当時のアイデアで見事に軽量化された旅の道具に思わず見入ってしまいます。

土蔵を改装した、独特の雰囲気をもつギャラリーとカフェ

土蔵を改装したギャラリーとカフェ
きれいに整えられたギャラリーへと続く砂利の部分。そのまま歩いて大丈夫だそう
蔵cafe&dining coconomi(ココノミ)店内の様子

昔の土蔵部分は、現在貸しギャラリーやレストランとして営業中。地場特産品を食材にした創作料理店、蔵cafe&dining coconomi(ココノミ)は洋風のランチプレートやパスタなどカフェメニューも充実しています。蔵の和の雰囲気と洋の雰囲気が交わり、ほかにはない特別な雰囲気。おいしいお料理とこの空間に魅せられ訪れる人も多い人気店なので、食事をするなら予約をしてから訪れましょう。

地元初亀醸造とのコラボが人気!物産館かしばや

お土産は物産館かしばやへ
かしばや限定の人気土産。初亀醸造の酒粕を使用したアーモンド

表通りに面して並ぶ物産館かしばやでは、岡部宿周辺の特産品や農産物、東海道関連の商品、民芸品から、子どもが喜びそうな駄菓子やレトロな玩具などを販売しています。すぐ近くにある老舗の酒蔵、初亀醸造の酒粕を使ったオリジナルアーモンドは、メディアでも紹介されるかしばや限定の人気商品。

ところてんやソフトクリーム、抹茶ラテなどをいただけるイートインコーナーでも、初亀醸造の酒粕を使った吟醸甘酒や、やさしい甘さで上品な味わいの大吟醸酒粕ラテはおすすめメニュー。柏屋見学の終わりに、ゆっくりお茶時間を過ごすのもよさそうです。

日本最大級! 等身大雛人形を展示する「かしばやのひなまつり」

等身大雛人形。横に小さく置かれた通常サイズのお雛様との比較すると、そのサイズ感がよくわかる

見どころが多い柏屋ですが、2月上旬〜4月上旬まで開催される、かしばやのひなまつりはぜひ注目してほしいイベントです。なんと日本最大級の、等身大の雛人形の5段飾りが展示されます! この等身大雛人形は、藤枝市内で雛人形を製作していた二代目好光人形師によるもの。旧岡部町に寄贈され、柏屋で毎年飾られるようになりました。

このほかにも、山内家に伝わる京風様式の雛飾りで、市指定有形文化財にもなっている山内家の雛人形『御殿飾』も展示。江戸時代終わり頃の1856年に製作されたと記載されているもので、京都御所内の御殿をかたどった建物3棟に40体以上の雛人形が配されており、こちらも大変豪華です。ぜひ開催期間中に訪れて、普段見慣れた雛人形とは少し違う雛人形をご堪能ください。

大旅籠柏屋へのアクセス・周辺の見どころ

大旅籠柏屋へのアクセスは、車で新東名高速道路藤枝岡部ICから10分、東名高速道路焼津ICから15分。車で10〜15分という近隣には、四季折々の茶花が楽しめる茶花園や、朝比奈地区で採れる茶葉を使った玉露や抹茶を味わえる茶室を持つ玉露の里、本丸櫓や茶室、仲間部屋などが移築・復元された史跡田中城下屋敷など、観光スポットも点在しています。岡部宿界隈にも魅力的な老舗店舗も多いので、岡部の街歩きやドライブを楽しんでみてはいかがでしょう。

 

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■岡部宿大旅籠 柏屋・内野本陣史跡広場
住所:静岡県 藤枝市岡部町岡部817番地
TEL:054-667-0018
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜、年末年始(月曜が祝日の場合はその翌日)
入館料:300円(中学生以下は無料)※ギャラリー・物産館は無料