伊豆半島で体験できる人気レジャーと言えば、もちろんマリンスポーツ! 駿河湾と相模湾に挟まれた伊豆半島は、多様な地形と海流の恩恵で、「見られる魚の種類が豊富!」と全国のダイバーからも人気を集めています。
「興味はあるけれど、スキューバダイビング(以下、ダイビング)はハードルが高い……」と思ったアナタ! 大丈夫です。シュノーケリングであれば、ダイビングよりも軽装備で、気軽にカラフルな魚を見ることができるんです。
というわけで、伊豆半島・北西部の駿河湾側に位置する沼津市「シュノーケリング教室」を体験取材してきました。さっそくその魅力をご紹介していきますね!
西伊豆の海の魅力とは
今回、体験取材をさせていただいたのは沼津市西浦にある〝平沢マリンセンター〟。伊豆半島にはマリンスポーツができるスポットがたくさんありますが、こちらは半島の付け根、沼津市内の施設なのでアクセスしやすいのも嬉しいポイント。
ミカンの産地としても有名な沼津市は、人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の主な舞台となった内浦地区に隣接しているエリアで、近くには伊豆・三津シーパラダイス、あわしまマリンパークなどの観光施設があり、一年中海や海の生き物が楽しめます。
平沢マリンセンターは高い波が少ない遠浅の海で、家族連れにも人気の沼津市営海水浴場「らららサンビーチ」横にある現地ダイビングサービスを提供する施設。施設内にはシャワーや更衣室、器材洗い場、休憩室などが整い、県内外から訪れる多くのダイバーに利用されています。
こちらでは、シュノーケリングのほかに、初心者でも楽しめる体験ダイビングやシーカヤック、SUPなどの体験教室も行っています(要事前予約)。
らららサンビーチ(平沢海水浴場)は沼津市が2003年度に開設した人工海浜施設。20年と21年は新型コロナウイルスの影響で海水浴場は閉鎖となりましたが、平沢マリンセンターをご利用の上でシュノーケリングやダイビングなどのマリンアクティビティが体験可能です。
今回のシュノーケリング体験で指導&ガイドを務めてくれるのは、センター長の朝倉一哉さん。
朝倉さんに、ズバリ伊豆の海の魅力をうかがうと「海中のシーンにも四季があるところ」と答えてくださいました。
伊豆の海では、海水温の高い時期には南方の魚、低い時期には深くて冷たい海に棲む魚を観ることができます。特に駿河湾に面する西伊豆では、駿河トラフという海溝が近距離にあるため、普段は深海に暮らし、浅瀬にやってくる珍しい深海魚を見られることも。「まずは潜ってみましょう!」という朝倉さんのにこやかな笑顔に期待を膨らませて、準備を始めました。
まずは水と器材に慣れるところから
受付と健康チェック、事前説明を受けた後は、更衣室で水着に着替えます。ラッシュガードと水着、ライフジャケットの装備でも楽しめるシュノーケリングですが、当日の水温や気温によってウェットスーツを着用します。取材当日はまだ水温が低く、ウェットスーツとマリンシューズを借りての挑戦になりました。
着替えたら海水浴場へ徒歩で移動。そこで、インストラクターの指示に従い、海水と器材に慣れるところから順番に進めていきます。
最初は腰の深さのところまで水に入り、マスクとシュノーケルの使い方を習います。自分で装着しますが、きちんと装着できているかインストラクターがチェックしてくれるので安心です。
シュノーケルは水面上に筒の上部先端が出ることで呼吸ができるようになる器材ですが、呼吸にはコツがあります。息を吐く時は「『う』の口で、スイカの種を飛ばすように勢いよく」、息を吸う時は「『う』の口で、慎重に短く何回かに分けて行う」ことが重要です。シュノーケルの上部先端から水が入ってしまっても、正しい呼吸をしていれば海水を急激に飲み込んだりせず、溺れの原因を回避できます。
真剣な表情でシュノーケルを付けたり外したりしていると、「スイカの種、飛ばしたことありますか?」と朝倉さん。慣れない器材に緊張していたところ、冗談を交えてほぐしてくれました。こんなふうに楽しく教室が進むのも平沢マリンセンターのシュノーケリング教室の魅力です。
マスク、シュノーケルに慣れた後は、フィンを装着してみましょう。砂浜に戻りフィンを着けたら、カニ歩きで移動して水中へ。実際に泳ぎながらフィンキックの方法を練習します。
水面で講習を受ける際、浮きの付いたオリジナルの補助具をインストラクターと共有するので、波に揺られても安心感があります。泳いでいる時も補助具を掴んでいれば、インストラクターとはぐれることもないのでご安心を!
まるで水族館の水槽みたい!
さて、器材の装着と呼吸法、フィンを使った泳ぎ方、起き上がり方を習った後は、いよいよ魚たちに会いに行きましょう。先程の浅瀬での練習ではまだ魚を見ていません。見えていたのは砂と自分の足だけ。果たして魚は見えるのでしょうか。
海水浴場の突堤近く「海藻が生えているところがポイントですよ」と朝倉さん。補助具に捕まりながら、1分ほど泳いで移動します。「いるいる!!」。一緒に体験したメンバーからも声が上がります。朝倉さんが指さす方向を覗いてみると……。
いました!魚たちです。背ビレあたりの濃いブルーが美しい魚や、薄灰色の小魚たちが海藻の間を縫うように泳いでいます。
30センチほどの棒のように細長い魚を見つけました。「今、足元にいた魚は何ですか?」と朝倉さんに尋ねると、「アオヤガラです。ユニークな体形をしていますね~」と教えてくれました。気になる魚を見つけたら、どんどん聞いてみましょう。ちなみに水の中では実物より3割ほど近く、大きく見えるそうですよ。
だいぶ慣れてきたらいったん浜辺に上がり、海水浴場に隣接するダイビングエリア(シュノーケリングも可)へ移動します。
張られているロープをたどりながら水中へと進んでいくと、ここでも突堤の近くや海藻が生い茂るポイントに、たくさんの魚たちが泳いでいるのが見えます。
小魚の群れ近くを大きな魚が悠々と泳いでいたり、海藻の合間から色鮮やかな魚がひょっこり現れたり。海水浴場でのシュノーケリングよりも、見える魚の数がぐっと増えました。浜辺から泳いで1〜2分の距離ですが、まるで水族館の水槽の中を泳いでいるようです。
自然を学ぶ貴重な体験に
魚たちの姿に夢中になって泳ぎを進めていると、水深が深くなってきました。朝倉さんの合図で泳ぎを止めます。ここから先は潮に流される可能性があるので注意が必要なエリア。ウェットスーツやフィンのおかげで恐怖感はありませんが、なんと水深約10メートル。海底までほとんど見通せたので、この日の海水の透明度は水深約10メートルとのことでした。
取材当日のシュノーケリングで見られた魚は、ざっと10種類以上。初めは種類を数えていましたが、途中から分からなくなるくらいたくさんの魚と出合えました。
魚の種類の多さ、量の豊富さ、これこそが沼津・西浦の海の特長です。朝倉さんによると、センターがある西浦地区の海岸は奥駿河湾南部に位置し、なおかつ、狭い湾が複雑に入り込んだリアス式海岸に似た海岸線を形成しているため波も穏やかとのこと。海に栄養が豊富なため、魚たちの住処となる海藻がよく育ち、たくさんの種類の魚に出会えるのです。
外洋の海に比べ透明度が比較的低い時もありますが、それはそれだけ栄養の多い海だということ。シュノーケリングを楽しむ上で透明度も重要ですが、生物の多様性が維持されている西浦の海、伊豆半島の自然環境の素晴らしさを改めて知ることができました。
気軽だけど本格的!シュノーケリングの魅力。
海中の魚やサンゴを見て楽しむ点でいうと、ダイビングとシュノーケリングは似ていますが、シュノーケリングはダイビングよりもお手軽に楽しめます。
「水中で」楽しむダイビングに対して、シュノーケリングは「水面で」楽しむものです。水圧の対策が不要で、酸素ボンベなどの装備も要りません。
今回一緒にシュノーケリングを体験したスタッフも「耳抜きが上手くできず、苦しい思いもした体験ダイビングに比べて、全く辛いことなくこんなにたくさんの魚が見られるなんて!」と感激していました。
しかし、呼吸に使うシュノーケルや足に装着するフィンは使い方にコツがあり、一歩間違えると命に関わる事故にもつながります。ライフジャケットを必ず着用するのはもちろん、体験教室を通じて道具の使い方のレクチャーを受けることが絶対おすすめです。マリンスポーツを存分に楽しむには、一番に安全を優先して遊びましょう。
平沢マリンセンターでは、7〜11月頃までシュノーケリング体験ができます。コースの所要時間は約3時間。小学校3年生程度から60歳くらいまでの方が対象とのこと。真夏であれば、ウェットスーツも要らないのでより気軽に体験できますよ。
気軽ではあるけれど、海の魅力を本格的に味わえるシュノーケリング体験。ぜひ、伊豆半島の豊かな海を体感してください!
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■内浦漁業共同組合「平沢マリンセンター」シュノーケリング教室
住所:沼津市西浦平沢25-8
受付:平沢マリンセンター施設内
TEL:055-942-2646
雨天決行、海況予報によって中止あり
料金5800円(施設利用料、保険料、レンタル料など)、駐車場代別
最低催行人数2人