静岡県西部、袋井市の豊かな自然の中に佇む法多山尊永寺(はったさんそんえいじ)は、古くから厄除け観音として地域の人々の信仰を集めてきた由緒あるお寺で、現在も多くの人々がご利益を求めて訪れる人気のスポットです。名物の厄除けだんごや、四季折々の美しい花々が人を惹きつけてやみません。さらに最近は素敵な御朱印や、おしゃれなカフェでのスイーツも話題となっています。法多山をのんびりと参拝し、心も体も癒される時間を過ごしてみませんか。
開創1300年。厄除け観音として、遠州人に愛されてきた古刹
地元では「はったさん」と呼ばれ、親しまれている法多山尊永寺。高野山真言宗の別格本山で、可睡斎、油山寺と並び、遠州三山の一つに数えられています。ご本尊は厄除け観音として知られる正観世音(しょうかんぜおん)菩薩。歴史は古く、奈良時代に聖武天皇の勅命を受けた行基上人が自ら刻んだ本尊正観世音菩薩を安置したのが縁起といわれています。
その後今川、豊臣、徳川の武将の信仰を得て12の社寺が栄えましたが、明治時代に尊永寺として統合され、2025年には開創1300年を迎えました。

掛川インターからは車で約20分。エコパスタジアムの近くに位置しています。タクシーを利用する場合はJR袋井駅から15分ほど。
門前では、紫のグラデーションが鮮やかな約1500個のてるてる坊主が出迎えてくれました。この先どんな絶景に出会えるのかわくわくが高まります。

駐車場から5分ほど歩くと、法多山の総門である仁王門にたどり着きます。1640年建立の国指定重要文化財であり、境内の中でも最も古い建造物です。約400年、法多山を参拝する人々を迎えてきた、境内を護る厳かな楼門。門の左右には迫力のある仁王像が立っています。
仁王門をくぐって参道へ。

初夏の参道は青紅葉がきらめき、樹齢400年以上の大杉が立ち並び、新緑が鮮やか。参道横の小川は清らかで、5月には蛍が飛び交います。野鳥の囀りが聞こえてくることも多く、参道を歩くだけでも神聖な気持ちになります。
砂利道の参道は今年石畳になり、電柱も埋設され、歩きやすくなりました。
四季折々花が咲き、季節の演出も多彩

季節ごとに景色が楽しめるのも法多山の魅力のひとつ。特に美しいのは、紫陽花と紅葉のシーズン。紫陽花は5月下旬から6月末まで、3000本のガクアジサイが美しい花を咲かせます。傘で演出されたフォトスポットもあります。

紅葉は11月中旬から12月上旬に見頃を迎えます。境内にはモミジやイチョウが多数植えられており、境内が赤や黄色に染まります。特に、長い参道、そして本堂へと続く階段脇のグラデーションは圧巻です。

参道の先には237段の石の階段があります。登り終えたら空気が一変し、鳳が舞い降りたようとも言われる、厳かな雰囲気に包まれた本堂が姿を現します。

手水舎では、華やかな花手水の出迎えに心が癒されます。法多山ではお参りの決まりはありません。お観音様へ、感謝と祈りをこめてお参りすると良いそうです。
法多山のご住職は、「人が集う」ことを大切にしており、境内では様々な催しが季節ごとに行われています。「楽しそう」「綺麗な写真が撮りたい」など気軽な理由でお寺に来るのも歓迎とのこと。ワンちゃんにも優しく、建物の手前まで入ることができるため、週末には多くの愛犬家たちが訪れます。

手水舎の上にはお花が入った風鈴が飾られていました。陶器の風鈴が、涼やかないい音を奏でます。


遠州三山では、毎年5月下旬から8月末まで「遠州三山風鈴まつり」が開催されています。法多山では約4000個もの風鈴が、参道や旧本堂を彩ります。装飾は毎年変わりますが、今年はころんとしたかわいいスイカ柄が登場。短冊に願い事を書いて奉納する願掛け風鈴も人気があります。

本堂横の「東翼殿」には、涼しげな風鈴の回廊も。演出は全て法多山の職員が手作りしています。

今回特別に、ご祈祷が行われる本堂の中を見せていただきました。中央に見えるのは、ご本尊の身代わりとして表に立つ「御前立観音(おまえだちかんのん)」と呼ばれる仏像。秘仏である御本尊、正観世音菩薩は、通常厨子という箱の中に安置されています。
2028年には、60年に一度の御開帳のタイミングを迎えます。御本尊の姿を見ることができる貴重な機会です。

法多山では、御朱印帳を持参、もしくは購入して受付すれば、その場で丁寧に墨書きしてくれます。やはり直書きの御朱印は嬉しいもの。参拝の思い出をより一層特別なものにしてくれます。

限定の御朱印も人気。カラフルなラメ入りの墨を使った御朱印は美しく、季節ごとに楽しめます。
歩き疲れたら、本堂近くのドリンク専門店へ

散策中に疲れたら、体にご褒美を。本堂から少し下がった場所にあるドリンク専門店「甘酒と果実(ごりやくカフェ)」。袋井市にある「榊原こうじ店」の米麹を使った優しい甘さの甘酒をメインに、フレッシュフルーツを使ったドリンクやコーヒーを販売しています。


暑い時期は、栄養たっぷりでさらっとした飲み口の冷やし甘酒がおすすめです。
【甘酒と果実(ごりやくカフェ)】
営業時間:Instagramにて確認
定休:月〜金(祝日は営業)
推し活の聖地?!二葉神社で縁結び

「二葉神社」は、かつて浜松市に存在した二葉遊郭の芸妓や女給達から信仰を集めていた神社。法多山に移築された今も、サービス業に携わる女性の商売繁盛、人気上昇、心願成就にご利益があるとされています。

当時遊郭で流行っていた願掛け「結縁乃帯(けちえんのおび)」が今日も続けられています。色とりどりの帯から一つ選んで願い事を書いて結びます。人気のアイドルグループがここで願掛けしたことから、推し活スポットとしても人気に。
法多山といったらやっぱり食べたい厄除けだんご

法多山名物といえば、厄除けだんご。江戸時代、将軍様に献上されたことが始まりとされ、150年もの歴史があります。小ぶりの細長いお団子が5つ連なった形で、上新粉のあっさりとしたお団子に、北海道産小豆の粒あんでもこしあんでもない、甘さ控えめのあんこが絶妙にマッチ。一カサ、5つのお団子は頭、首、胴体、手、脚を表しているそう。健康を祈願しながら食べるのが習わしですが、一人で食べても、誰かと分け合って食べてもOK。


毎月一度の「功徳日」に登場する袋井市のお茶を練り込んだお茶だんごや、春のさくらだんご、秋の栗だんご、さらに夏にはお団子が一カサついた厄除氷など、その時期限定のレアメニューもあります。この法多山の厄除けだんごは、静岡県西部の広い地域で愛されていて、親戚や友達へのお土産に5箱、10箱と買い求める方もたくさんいるとか。法多山に来たら外せない名物スイーツ、厄除けだんご。ぜひ味わってくださいね。
【だんご茶屋】
電話:0538-42-4784
営業時間:8:00~16:30(LO16:25)
※おみやげ販売~17:00
料金:一皿250円(2カサ・お茶付き)
※おみやげ 6カサ入り一箱700円、12カサ入り一箱1400円
ご祈祷済みの開運スイーツと住職プロデュースのコーヒーをお土産に

最後は門前通りの「門前ごりやくカフェ」で休憩&お土産探しを。こちらはコーヒーとパウンドケーキのお店です。

ここのコーヒーは、法多山の住職である大谷純應(じゅんのう)さんが監修しています。焙煎は自家焙煎珈琲豆専門店「まめやかふぇ」さん。和菓子にも洋菓子にも合うコーヒーを、というコンセプトで共同監修しています。香りが芳醇でコクがあり、飲んだ後はスッキリとした味わい。お土産にぜひ。

パウンドケーキは常時10種類ほどあり、パティシエが毎日お店で焼いています。使われている小麦粉は、全て御祈祷済み。中でもおすすめの、甘酒を使った「甘酒ショコラ」は境内の「甘酒と果実(ごりやくカフェ)」と同じ甘酒を使用していて、優しい甘み。チョコレートを混ぜることで生まれる、ほろっとした食感が絶妙です。季節限定の「完熟苺パウンド」は、地元の美味しい苺をセミドライにして美味しさを閉じ込め生地に練り込んでいます。見た目もかわいいデザートです。
【門前ごりやくカフェ 】
住所:静岡県袋井市豊沢2691-1
電話:0538-24-7666
営業時間:9:30〜16:00(LO15:30、縁日の時は8:00〜)
定休:水曜
広大な境内を巡るだけでも心が洗われるような清々しさが感じられる法多山。 あちこち写真を撮りながら、美味しいドリンクやスイーツを食べ歩きすれば、時間が経つのはあっという間。季節ごとにさまざまな表情が楽しめるので、きっと何度でも訪れたくなるはずです。
【法多山尊永寺】
住所:静岡県袋井市豊沢2777
電話:0538-43-3601
営業時間:参拝自由(窓口 8:30~16:30)
定休:無休
入場料金:無料
駐車場:近隣の有料駐車場利用