あじさい・酔芙蓉・吊るし雛!季節ごとに異なる顔が楽しめる国指定重要文化財、牧之原「大鐘家」

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大鐘家
牧之原市片平にある国指定重要文化財「大鐘家」のあじさいの季節の様子

今回ご紹介するのは東名吉田ICから車で約20分ほどの牧之原市にある、国指定重要文化財「大鐘家(おおがねけ)」です。近くには片浜海水浴場もあるこの立地に大鐘家が建てられたのは今から約300年前のこと。現在も24代目当主ご家族がここで暮らしていますが、長屋門と母屋、歴史的資料を保存する蔵や庭園は、一般公開されています。江戸初期の豪農の屋敷構えが今も残っていることから、映画「銀塊」ほかテレビドラマなどのロケが行われたこともあるそうです。

歴史的な建造物であることに加え、季節ごとに異なる顔で訪れる人々を楽しませてくれるのも、大鐘家の魅力! 5月下旬〜7月上旬にはあじさいが、9月上旬〜10月中旬には酔芙蓉(すいふよう)が咲き乱れ、1月上旬〜5月中旬には吊るし飾り展が催されます。さらに母屋や蔵の裏手を少し登って行けば、富士山が一望できるスポットもあるんです。そこで1年を通した大鐘家の見どころをご紹介していきます。

大鐘家の歴史

大鐘家
大鐘正典さん。いろいろなお話をしてくださる気さくな方です
大鐘家
受付がある入口

ご案内くださったのは大鐘家24代目当主の弟さんで、大鐘家の管理人でもある大鐘正典さん。大鐘家に関することはもちろん、周辺の歴史的背景にも詳しい方で、史実を交えながら興味深いお話をたくさん聞かせていただきました!

大鐘家が重要文化財に指定されたのは1973年のこと。その当時はまだ一般開放されていない民家でしたが、指定を受けたことで、田んぼだった土地を埋め、広大な土地を整備して1994年に観光施設としてオープンしたそうです。

大鐘家と牧之原とのゆかりの始まりは、16世紀の終わり、7代目・大鐘藤八郎貞綱の時代。貞綱は、近江国(現在の滋賀県)の郷士・佐々木定政の三子として生まれますが、父とともに尾張国(愛知県)の蓮教寺(名古屋市名東区高針)に養子入りし、山田姓を名乗ります。武道を好んだ貞綱は、柴田勝家とともに織田信長の臣下として出陣。丸岡(福井県)攻めの際に洪鐘(こうしょう。大きな釣鐘のこと)を陣羽織の紋として活躍したことから、信長に認められ、大鐘の姓を賜ることに。以降、大鐘藤八郎と名乗ったと伝えられています。

大鐘家
「大鐘家」の資料館になっている蔵で見ることができる、大鐘藤八郎貞綱の肖像画


勝家の甥の柴田勝豊が丸岡城を築いた際には、藤八郎は勝豊に仕え、筆頭家老になります。1582年、勝家は勝豊を長浜に移し、藤八郎は城を受け取りますが、豊臣秀吉の軍に囲まれ、降伏。その後1597年、藤八郎は遠州相良(現在の牧之原市)に移住し、帰農したと伝えられています。江戸時代の大鐘家は、旗本三千石の格式を持ち、18世紀初めには大庄屋となり、大鐘屋館を築きました。

国指定重要文化財になっている大鐘家の長屋門と母屋は、1711年頃に建てられたと言われています。1978年(昭和53年)に修復工事を行っていますが、江戸時代の面影を残した建物を見学することができます。

江戸時代の豪農の暮らしを知る

大鐘家
長屋門を母屋側から見た様子
大鐘家
「大鐘家」の母屋

まずは長屋門をくぐり中庭へ! 茅葺き屋根の長屋門は見るからに風情があります。現在は瓦屋根になっている母屋も、明治中期以前までは茅葺き屋根だったそう。庭にはあじさいや梅、柿の木なども植えられ、古き良き日本の風景といった趣です。

大鐘家
母屋の内部。梁(はり)や大黒柱の太さに驚く
大鐘家
母屋の台所全体の様子

母屋に一歩足を踏み入れると、黒マツを使用した太い梁が幾重にも組まれている構造に、一般の農民ではなく豪農のお屋敷だったことが素人目にもうかがえます。大黒柱や梁は、建築当時の姿がそのまま残されており、手斧削り(ちょうなけずり)や、くさび止めなどの江戸時代の建立様式も観察できます。

母屋の台所部分には、当主用とは別に、使用人用の大きなかまど(この辺りでは“へっつい”とも呼ばれます。)が残されています。江戸時代には使用人30人分の食事が作られていたのだとか。今は当主家族のみの静かな暮らしぶりですが、江戸時代はにぎやかだったんだろうなあと想像してしまいます。

歴史的重要人物も宿泊した母屋

大鐘家
明治時代に板垣退助の影響で自由民権運動に参加し、韓国併合などを推進していた頭山満(とおやま みつる)が描いた書。「至誠是神(しせいこれかみ)」と書いてあり、“この上なく、誠実なこと、すなわち「神」天皇である”という意味
大鐘家
井伊家の菩提寺・龍潭寺の庭園も手がけた小堀遠州の庭園に似せて作庭された

母屋からは、小堀遠州(小堀政一)の庭園に似せた見事なお庭も広がります。小堀遠州は徳川家康に仕えた大名で、近江国小室藩初代藩主でありながら、茶人、作庭家として名を馳せた人物。二条城や東京国立博物館の茶室、皇居東御苑なども手がけています。彼の庭園の雰囲気に通じるものがある趣ある庭園なので、ぜひゆっくり眺めてみてください。

大鐘家
明治維新の頃に使用されていた西洋のケベール銃も展示されています。この銃が大鐘家にあるいわれは不明とのこと。他にオランダの銃も発見されており、別のところで収蔵されているそうです
大鐘家
地袋には、狩野派の素養画が残されています。能の最後のシーンが

実はこの大鐘家、幕末期にはかの山岡鉄舟も宿泊したのだそう! 山岡鉄舟は徳川慶喜の使者として駿府(静岡市)へ行き西郷隆盛と会い、江戸無血開城の大枠を決めた立役者。大鐘家には、山岡鉄舟からのお礼状もあったそうですが、残念ながら人に貸し出しをして以来、戻ってきていないとのことでした。

大鐘家
手づくり感があるゆがみが見られるガラス窓
大鐘家
部屋の電球には小さなひょうたんの吊るし飾りがぶら下げてあります。これは以前、ひょうたん作家さんの展示を行ったときの名残

屋敷の天井を見上げると低めな印象、これは槍や刀を振り回されないようにするためだそう。ガラス窓は旧沼津御用邸と同タイプのものが使用されているそうです。写真ではわかりにくいのですが、斜めから見てみるとほんの少し波打っているような味のある作り。今ではほとんど見ることができないガラスで、窓から入る光が柔らかく、レトロな雰囲気をより一層感じさせてくれます。

大鐘家
母屋の上がりかまちの横に置かれた節句人形
大鐘家
大正時代の英語の教科書など、昔の日用品も展示されています

母屋の室内には、大鐘家に代々残されている様々な日用品も展示されていました。明治維新の頃の西洋銃、大正時代の学校の教科書、古い新聞、入浴剤……、詳細のいわれはわからないものも多いようですが、どれも大鐘家の祖先が何らかの形で使ってきたもの。昔の人々の生活の一部を垣間見ることができるのも大鐘家の魅力のひとつと言えます。

大鐘家に伝わる秘宝を展示する資料館!

大鐘家
資料館には貴重な品々が展示されています
大鐘家
美しい色絵で染付された伊万里焼。器好きなら思わず見入ってしまいそうです

大鐘家に残されているものは、もちろん日用品だけではありません! 母家の裏に約200年前に建てられた米蔵が資料館になっており、江戸時代から伝わる大鐘家の秘宝が展示されています。

江戸時代後期の画家・渡辺崋山と椿椿山との合作画(崋山が馬に乗った源頼朝を、椿山が桜を描いた作品)は、以前テレビ番組で鑑定した際に高値がついたもの。崋山の孫による証明書も残されていることから、本物の可能性が高いと言われています。
他にも田沼意次から賜ったとされる酒杯、十辺舎一九の掛け軸などの古文書、骨董品を見ることができます。歴史上の重要人物と関わりがあった、大鐘家ならではの宝の数々に思わず「すごい・・・」と感銘の声が漏れてしまいます。

ちなみに、田沼意次は遠江国相良藩(牧之原市相良)の初代藩主。大鐘家の長屋門の前には、意次の名前を冠した田沼街道(別名・相良街道)が街道跡として残っています。意次の名が付いてはいますが、意次の時代より前から道は存在していました。意次が造ったと人々が勘違いしてそう呼ぶようになったことが所以だそうです。

裏山からは富士山、伊豆半島も!

大鐘家
樹齢300年ほどと想定されるヤマモモの木。幹のうねりが芸術的です
大鐘家
空気が澄んだ冬のある日に撮影。美しい富士山を写真に収めることができました

お宝を見学したあとは、裏山に登ってみましょう! 山といっても、5分、10分程度で登れる距離なのでご安心を。

樹齢300年ほどと推測されるヤマモモやイチョウの木など、存在感がある大きな木もあり、散策路としても整備されています。季節により、あじさい、藤、椿、桜などの花を見ることができます。数年前には野生のキジを見かけたこともあるのだそう! 天気がよければ富士山や駿河湾、伊豆半島を一望することもできますよ。

大鐘家
お稲荷さんが祀られているパワースポット
大鐘家
中にはかわいらしいお稲荷さんが鎮座しています

裏山には商売繁盛・金運にご利益があるお稲荷さんも鎮座しています。詳細の所以は不明ですが、実は松崎町にも同じお稲荷さんがいるとのこと。松崎町は駿河湾を通して対岸にあるので、台風で流れついてきたのではとも考えられているそうです。

社の上には倒木した木があったのですが、まるでこの社を避けるように倒木しており、お稲荷さんのパワーを感じることができます。❝大鐘(おおがね)❞家のパワースポットで、❝大金(おおがね)❞にあやかりたいですね。   

あじさい・酔芙蓉・吊るし飾 ~大鐘家で季節を愛でる~ 

大鐘家
庭園のアジサイ

「大鐘家」といえば「あじさい」を連想する方も多いのではないでしょうか。一番人気のあじさい祭は、5月下旬〜7月上旬に開催されます。庭園や裏山に植樹された色とりどりのあじさいを目当てに、毎年多くの観光客が訪れます。庭園からのあじさい越しに見える長屋門の写真カットが人気! レトロなタッチに加工すると、SNS映えもしそうですよ。前述の裏山にもあじさいの散策路が続きます。

あじさいの見頃は梅雨と重なりますが、雨に濡れるあじさいもまた華があり悪くないですよね。雨上がり後の訪問は足元が悪くなるので、十分注意してくださいね。

大鐘家
人の背丈よりも高くなる酔芙蓉

9月上旬〜10月中旬には酔芙蓉の花が見頃を迎えます。朝、白く咲かせた花が、昼には薄いピンクに変わり、夕方、濃いピンクになった後しぼんでしまう酔芙蓉。お酒に酔っているように花色が変化していくことから、その名が付いたと言われています。写真では白とピンクが同じタイミングで咲いているように見えますが、濃いピンクのものは前日に咲き終わったものだそう。こんなにも色が変わるなんて、本当に不思議なお花です。

ちなみに、酔芙蓉もあじさい同様、冬場に剪定が必要。根本まで切り戻してしまうそうですが、開花の頃には背丈が3mほどまで成長します。1日で花が終わってしまう儚さと、生命力の強さの両方を併せ持つ魅力的なお花なんです。

大鐘家
人々の目を楽しませてくれるつるし雛

1月上旬〜5月中旬には、吊るし飾り展が開催されます。稲取発祥の吊るし雛(稲取では「雛のつるし飾り」と呼ばれます)は、もともとお雛様が買えない貧しい家で着物の端切れなどを用いて作られていたのが始まりと言われています。モチーフにはそれぞれに込められた願いがあるのだそう。大鐘家でも地元の方々からの寄付などにより、多くの吊るし雛が展示され、訪れる人々をもてなしてくれます。ひな祭りシーズンのあとは、男の子用の吊るし雛も登場します。

歴史ある大鐘家で行われると、風情も一層増したものに。一つひとつ丁寧に作られた吊るし雛、大鐘家の見事なお雛様や甲冑などと一緒にじっくり見学してみてください。

売店オリジナル「百葉茶」をいただける無料スペースも

大鐘家
売店スペースには無料で百葉茶をいただける場所も
大鐘家
100種類の薬草をブレンドした「大鐘家」オリジナル商品「百葉茶」。さまざまな薬草の効果に期待でき、麦茶のような味です

受付横の売店には大鐘家のオリジナルの大人気商品「百葉茶」を無料でいただけるスペースも。百葉茶は、100種類の薬草をブレンドしたお茶で、口コミから人気が広まり全国から発注があるほど。薬草と聞くとくせがありそうですが、麦茶のようなくせのない味で、おいしくいただけます。
あじさい祭りのシーズンであれば、大鐘餅や茶羊羹の販売があるので、お茶と一緒にいただくこともできます。売店には牧之原市の周辺施設の観光案内パンフレットもあるので、あわせて確認してみるとよさそうです。

訪れる季節ごとに異なる顔を見せてくれる大鐘家。時期を変えて訪れ、ぜひお気に入りの季節を見つけてみてください。

大鐘家
門前には正典さんの弟さんが営むそば店も。シーズンオフのときはお休みにしていることもあるので、訪れる際は確認してから訪問を

<DATA>
■国指定重要文化財 大鐘家
住所:静岡県牧之原市片浜1032
TEL:0548-52-4277
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:1/1〜1/3
入館料:大人400円、小人200円 ※あじさい祭期間中は700円など、季節や行事により入館料に変動あり

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