シルクロード・ミュージアム

何千年もの時を経て、指先から伝わるシルクロードの文化

たとえ歴史好きでなくとも、「シルクロード」という言葉を聞くと「悠久」「ロマン」を連想し、胸が高鳴るという人は少なくないと思います。老若男女を魅了するシルクロードの世界ですが、実はシルクロードの遺物を常設する美術館というのは全国に二つしかないんです。そしてその一つが、ここ磐田市上野部にありました。

シルクロード・ミュージアム
静かな山間にひっそりと佇むミュージアム

駐車場を降りて小橋を渡ると入り口にあるラクダのオブジェが来館客を迎えてくれます。目の前に建つ建物は、江戸時代から続く豪農の屋敷を修復、増改築した重厚感のある日本家屋。建物には一本も釘を使うことなく建てられているそう。どっしりと包み込むような穏やかな空気に包まれた癒やしの空間です。

人間国宝の作品がずらりと並ぶ回遊式ギャラリー

シルクロード・ミュージアム
素人目にも「普通の代物ではない」ことがわかる、花嫁衣装

館内1階には日本の伝統工芸品を展示。まず目を引くのが華やかな花嫁衣装(期間限定展示)。作られたのは太平洋戦争中だそうで、現代では手に入れることはできないほどの良質な絹糸を使って製作された総刺繍の打掛けと、総絞りの振り袖の美しさに圧倒されます。

シルクロード・ミュージアム
総量220kg、直径1.8mもある磁器の染付大皿

その横には総量220kg、直径1.8mもある磁器の染付大皿が。中国・景徳鎮で100年ほど前に焼かれたものだそうです。このサイズが入る窯というのはどれだけ大きいものなのか……こんなに大きなお皿は初めて見ました。

この写真を見てあれ?展示物に触ってる?と思いませんでしたか?実は、こちらのミュージアムの特長でもあるのが、囲いなく展示しているものは基本的に触ってもOKということ。ぜひ実際に作品に触れ、作り手の想いを感じられてみてはいかがでしょう。

そしてここからは唐津焼、有田焼、清水焼など、人間国宝級の名品が怒濤のように展示されていきます。

シルクロード・ミュージアム
益子焼・浜田庄司の「白釉黒流描大鉢」
シルクロード・ミュージアム
美濃焼・加藤卓男の「塔の器(風音)」
シルクロード・ミュージアム
九谷焼・第三代徳田八十吉「耀彩大皿・雷命」

益子焼・浜田庄司の「白釉黒流描大鉢」をはじめ、九谷焼・第三代徳田八十吉「碧明釉花瓶」や「耀彩大皿・雷命」、美濃焼・加藤卓男の「塔の器(風音)」などその繊細さや美しさ、芸術的でモダンな色彩はため息が出るほど。眺めているだけで私たちの気持ちを豊かにしてくれます。

現在はケースのなかにしまわれ、触ることはできません

実はこれまでに人間国宝級の茶碗を実際に使用したお茶会も開催したこともあるそうで、次回の開催は未定とのことですが、機会があればとても貴重な体験が出来そうですね。

そのほかにも、300年前の朝鮮製の火鉢や鏡台、舟箪笥、明治時代の金庫な魅力的な展示物が並びます。

見て触れて感じるシルクロードのロマン

シルクロード・ミュージアム
パキスタン・ガンダーラ地方で製作された弥勒菩薩立像

2階へ続く階段を上がると、そこにあるのはギリシャ彫刻のような彫りの深いマッチョな男性。聞けば1800年前、2〜3世紀のパキスタン・ガンダーラ地方で製作された弥勒菩薩立像とのこと。

初期の仏教彫刻はギリシャ彫刻の影響を受けていて、お釈迦様の若い時代を写すため、割れた腹筋や髭の姿で造られています。それが中国、朝鮮半島、日本に伝播するにつれ、中性的でやわらかな姿に変わっていったそうです。

一枚の石を彫って造られており、よく見ると土もついています。長い間土の中に埋まっていたものを掘り出しているので、無理に土を取ろうとすると岩肌が荒れるのであえて残しているそうです。それも“本物の証”なのです。

シルクロード・ミュージアム
「幸せになれそう」そんな気持ちにさせてくれる仏陀像

そして横には仏陀頭部。紀元3〜4世紀・ガンダーラで出土したもので、日本で言う如来様。頭部のみですが、目線の高さを変え、床に座って見上げると、かすかに微笑みを浮かべたやさしいお顔に心が洗われるよう。ふと涙が出てくるほどでした。

シルクロード・ミュージアム
釈迦誕生図レリーフ

こちらはガンダーラのレリーフで、お釈迦様誕生の時の様子が象られています。ガンダーラではお釈迦様は、お母さんの右脇腹から産まれたとされているそう。びっくりしますよね。ちなみに日本では右の脇の下から産まれたとも言われています。それはそれでびっくりしました。

シルクロード・ミュージアム
お釈迦様が相撲を取っているレリーフ(中央下)
シルクロード・ミュージアム
ガンダーラ出土の涅槃図

お釈迦様が足の下から水を噴き上げ肩から火を放つ奇跡を起こした瞬間や、お釈迦様が相撲を取る姿、亡くなる最期の時を映したレリーフ、涅槃図など希少な遺物が展示されていました。

また、世界でも数枚しか残されていないペルシャ絨毯の断片や7〜8世紀アジアのソグド錦、トンボ玉や紀元前のペンダント、矢じり、コイン、ローマングラスの小瓶や切子ガラス椀などもこちらでは鑑賞することができます。

特に古代ガラスは長い年月をかけて表面が銀化し、透明なガラスが銀箔を帯びたような独特な味わいを醸し出していて、とても興味深いものでした。

シルクロード・ミュージアム
「ガラス」と書いていないと気づかないかも!?

数千年前の人たちの生活に触れる感動の時間

シルクロード・ミュージアム
トラや馬、アヒルなどが描かれた大きな舗床モザイク
シルクロード・ミュージアム
4〜5世紀・地中海東沿岸で出土したもの

いくつもの色の違う天然石を組み合わせて造られたモザイク画が、1600年以上の後にこうして目の前にあり、見て、触れて、この上を歩いていた当時の人たちの生活に想いを馳せることができる……貴重な体験です。

さらにすごいことに、紀元前9世紀、イラク北部ニムルドで出土したアッシュールナツィルバス2世のくさび形文字碑文の一部も展示されています。

シルクロード・ミュージアム
本物のくさび形文字碑文にさわれるなんて!

彩文土器やイスラム陶器、中国の加彩土器など実際に足を運び、その目で、その手に触れて感動を味わってくださいね。

シルクロード・ミュージアムの所蔵品はご紹介できていないものがたくさん!焼物だけでも約70点あり、その約7割は人間国宝の作品です。そしてシルクロードに関連する遺物に関しては、約1500点を所有し、全国の美術館に貸出するような国宝級の展示物が多数です。

館内では職員さんが、一つずつ丁寧に解説をしながら案内してくださるので作品だけでなくシルクロードの歴史への理解も深まります。

シルクロード・ミュージアム
1階に併設されたショップ

シルクロードの文化に触れ、豊かで穏やかな心になれる場所。季節ごとストーリーに合わせたイベント展示も開催しているので、幾度となく足を運んでみてくださいね。

<DATA>
シルクロード・ミュージアム
住所:静岡県磐田市上野部888
TEL:0539-63-5050
開館時間:9:30〜17:00
休館日:月曜日