遠州三山のひとつとして親しまれている可睡斎。お参りやご祈祷とともに、新春のひなまつり、春のぼたんまつり、夏の風鈴まつり、秋の紅葉めぐり、冬の秋葉火まつり、と四季の行事にも多くの人が訪れます。境内の見どころも多く、ふらりとお参りに立ち寄るだけでも充実感がありますが、行事に合わせて拝観(有料)すれば大庭園や美しい襖絵のある瑞龍閣、雲水(修行僧)のお勤めに触れることもでき、非日常感を味わえます。まずはそのいわれからご紹介しましょう。
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秋葉総本殿 可睡斎の歴史
1401(応永8)年、如仲天誾(じょちゅうてんぎん)禅師が山号を「萬松山(ばんしょうざん)」、寺号を「東陽軒」として開山したのが始まりといわれる曹洞宗屈指の名刹です。明治6年、廃寺となった秋葉山秋葉寺から秋葉三尺坊大権現様のご神体が可睡斎へ置かれることとなり、「秋葉総本殿」の扁額を賜ると全国にその名が知れ、多くの信者の尊崇を受け今に至っています。ちなみに秋葉山は、秋葉寺廃寺直後に秋葉神社が建立されました。
「火の用心」1300年の歴史ある秋葉参りへ
ではいよいよお参りです。参拝客を迎える総門は、曹洞宗の大本山「総持寺」の総門を参考に2019年11月末に再建されました。その先には、お守りや土産が並ぶ「洗心閣」、ここを左に上っていくと春に見頃を迎える「ぼたん苑」があります。洗心閣から石段を上がると「山門」です。両脇には金剛力士像の阿形像と吽形像が憤怒の相でにらみ、梁には阿吽の獅子が顔を見合わせているのもぜひ眺めてみてください。そして目の前が「本堂」となります。本堂を左に進み石段を上がると、「秋葉総本殿三尺坊様 御真殿」です。階段の途中の両脇には天狗像がにらみをきかせ、拝殿には、数々の天狗の面が飾られているのが特徴的。本殿ではご祈祷や365日朝昼晩のお勤めがあり、読経の声が境内にも響き渡ります。拝観すれば、お勤めの様子を見学することもできますよ。
可睡斎の境内は東京ドーム約10個分の広さを誇り、建造物数は25棟、拝観ポイントは40ヵ所あります。西側には日露戦争の戦死者の霊を奉る「護国塔」が、御真殿から東の山を上っていくと、武田信玄に追われた家康が穴に隠れて難を逃れたという「出世六の字穴」があるので、健脚の方はぜひぐるりと巡ってみてはいかがでしょう。
「食材の持ち味を生かす」精進料理
可睡斎では、精進料理の重鎮であり、「総持寺」の典座(食事係)を務めた小金山泰玄和尚が作る精進料理をいただくことができます。動物性の食材とネギ属を使わず、豆類・穀物・野菜を工夫した調理法で、煩悩の刺激を避けた料理ですが、見た目の美しさもさることながら、味付けも変化に富み、五感に贅沢なお膳です。道元禅師が「つくるもたべるも修業」と説いており、食事の前にはぜひ箸袋の裏に書かれた食事訓をご一読あれ。
「作った人の手間を思い、食べる価値のある人間かを問い、負のエネルギーを遠ざけ、薬と思い、悟りを開く心構えで、いただきます」合掌。
精進料理 2000円~35000円 一週間前までに予約を。
精進アイス
洗心閣(売店)で販売している精進アイスもおすすめです。門前にある人気ジェラート店「じぇらーとげんき」とコラボした「豆腐あいすくりん」は、抹茶・豆乳・黒ゴマ・チョコレートの4種類。すべて豆乳ベースでさっぱりした口当たり。小金山和尚が炊いたあんこが絶品です。400円(チョコレートは450円)
禅の教えを学ぶ
可睡斎は東海道一の禅の修業道場でもあり、禅寺としても知られています。一般の座禅体験も受け付けており、毎月、参禅会「月心会」を開催。精進料理、座禅、写経、法話を体験することができ、静寂の中で自分を見つめ直すきっかけになりそう。
トイレが名物! 煩悩を焼き尽くす炎の神を祀る
拝観の楽しみのひとつが、昭和12年に完成した大東司(お手洗い)です。当時では珍しい水洗トイレで、中央に鳥蒭沙摩明王像(うすさまみょうおうぞう)を祀っています。美しく磨かれた木の床、網代天井、蓮の手洗いなど、トイレとは思えない空間ですが、使用可能とのこと。用をたす際は、「清浄なる自己に目覚めさせる徳をもつ」仏さまにまずは一礼。
可睡斎ひなまつり 1月1日~3月31日
春の風物詩として元旦から開催される「ひなまつり」。人形供養から始まったもので、平成27年から徐々に数を増やし、大書院や廊下に展示。なかでも国登録有形文化財「瑞龍閣」に飾られた32段1200体のおひなさまは壮観です。ひなまつり限定の精進料理も人気。
御朱印とお守り
御朱印の受付は萬松閣へ。通常は「聖観音」「秋葉総本殿」「三尺坊」の3種類の御朱印をいただくことができます。「ひなまつり」と「風鈴まつり」の時期は限定の御朱印もあり、いい思い出になりそうですね。(御朱印300円)
そして、お守りは洗心閣(売店)へ。秋葉総本殿にちなんだ天狗のお守りが人気のよう。珍しいのが「安眠健康守」。こちらは、可睡斎と呼ばれる縁起にちなんだものです。家康がまだ小さい頃に身を隠す手伝いをした11代目住職が、後に家康と再会した際、居眠りをしたことから、「可睡和尚」(殿の前で眠ることを許された和尚)と呼ばれ、いつしかお寺の名前も「可睡」と呼ばれるようになったといわれています。枕の下に置くことで、安眠が得られるお守りです。「安眠健康守」500円
ぼたん苑
3000坪の敷地に、150種2000株のぼたんが咲き誇ります。見頃は4月中旬から5月上旬にかけて。花びらが幾重にも重なる優雅な姿をご覧ください。
入苑料500円 8:00~17:00
可睡斎
拝観料500円 拝観時間8:00~16:30